心理的瑕疵物件の告知義務
心理的瑕疵物件を扱う売主・貸主は、相手方へ必ずその告知をしなければならない義務があり、そのことは宅地建物取引業法第47条に規定されています。告知をしない場合には、告知義務違反となり訴えられることもあります。
《宅地建物取引業法第47条の1》
「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」
自ら積極的に心理的瑕疵物件を買ったり借りたりする人はいないでしょうから、47条でいうところの「相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこと」に、その事実は該当するでしょう。
心理的瑕疵物件は、何年経過したら告知義務がなくなるなどの基準は決まっていません。
たとえ10年、20年、50年、100年経過していたとしても、心理的瑕疵を感じる感覚は人それぞれ異なりますし、仮に100年も前のことであっても、その場所の歴史的な背景を気にする人もいるため、何年経ったら告知義務をしなくても良いという明確な基準は存在しません。また、心理的瑕疵物件が何回か人の手に渡れば告知義務がなくなるかというと、それも明確な基準は存在していませんし、例えば、同じマンションの別の部屋で自殺や殺人があった場合でも告知義務は発生する場合があります。マンションの敷地内である以上、それは告知事項となります。実際に心理的瑕疵物件の定義として判例ではこのように述べています。
“建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景など客観的な事情に属しない事由をもって瑕疵といいうるためには、単に買主において右事由の存する家屋の居住を好まぬというだけでは足らず、さらに進んで、それが通常一般人において右事由があれば「住み心地のよさ」を欠くと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであることを必要とする”
わかりやすく説明すると、買主や借主が「住みにくい」と感じたら心理的瑕疵というわけではなく、通常一般人(近隣住民など)から見ても住みにくいと感じるのであれば、心理的瑕疵と判断できるということです。
最近では、近隣に、暴力団事務所、宗教施設、火葬場、ゴミ処理場などがある場合も心理的瑕疵とみなされことがあるため、その物件が該当する場合には売主・貸主は相手方へ必ず告知をするべきでしょう。昨今、インターネットで調べれば心理的瑕疵物件(事故物件)がすぐに分かりますので、買主・借主は自分で一度調べてみるのもよいでしょう。