まずは売買価格の範囲を決める
価格は時価80%以上にすべき理由
親族間売買での売買価格の最低ラインは、結論を言うと時価総額の80%以上とされています。
その根拠は、「東京地裁判決平成19年8月23日(行ウ)第562号」です。判決文をそのまま記載してしまうと複雑になるので、簡潔に判例の内容を説明すると、この裁判では、路線価での親族間同士の土地売買が市場価格よりも著しく低い金額での譲渡(低額譲渡)に該当するのではないかと争われたケースですが、結果としては路線価(時価80%)の親族間売買は、著しく低い金額での売買ではないとの判断がなされました。
ポイント
税務署は不動産のプロではありませんから、簡単に親族間売買の不動産の価格を算定することができません。つまり、わかりやすい判断基準として、路線価や評価額を基準にあてていることは間違いないはずなので、税務署もこの東京地裁の判例をもとに、親族間売買の価格が低額譲渡に該当するか判断しているのは、確実だと思われます。
よって、最低ラインとしては、この路線価をベースとして考えるのが、親族間売買でみなし贈与とならないポイントだと思います。
最高ラインについては、市場価格をネットで調べたり、不動産業者から査定をとるなりして調べればいいので、そこまで難しいことではないと思います。
つまり、路線価(時価80%)~市場価格(100%)の範囲において、親族間売買の価格設定をすることで、低額譲渡に該当するリスクを回避することができるはずです。
ただし、それはあくまで一般論であって、急な地価の値上がりした場合、路線価が出ていない地域、タワーマンションのように極端に路線価だと売買価格が低くなってしまう場合など、事情によっては路線価では算定が難しいケースが出てきますので注意してください。